巨人の肩に立ちたいゲイ

30代ゲイのブログ。ゲイとしての考えたことをアウトプットしたり整理したりするような場にできればと思っております。やまとなでしこの頃の堤真一が好きです。

早期リタイアのために頑張ることの矛盾

ひろゆきの切り抜き動画をYoutubeで眺めていて,FIREという言葉を知りました.Financial Independence, Retire Earlyということで,まあ資産運用による早期リタイアということなんでしょう.少し調べてみるとセミリタイア的なライフスタイルをこの範疇に入れて語る人もいるようです.さて早期リタイアということですが,確かに働かずして死ぬまで生活できるってのは漠然と憧れるというか,幸せそうなイメージがありますよね.働かない余生→真っ白な砂浜で読書する老人の写真→ストレスのない平穏な生活という連想ゲームです.とはいえ,僕は別にFIREとかセミリタイアって想像できないんです.ごく平凡な家庭で育ち平凡なゲイをやっている身からすると,そんな大それたことを想像ができない,ということでしょうか.根が貧乏性なんでしょうね.

 


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FIREについて調べていくと,共通するのは年間支出の25倍の貯蓄と,年利4%(1/25)の運用ということのようです.元手があれば運用益で毎年の支出を賄えますよねというアイディア.確かにその通りです.年間支出を小さく見積もれば25年倍の貯蓄も可能でしょう.セミリタイアを仮定すればもう少し少ない金額でも始められそうに思えます.ときどきご飯を食べに行く元彼は今ではトレード仲間としての意味合いが強いのですが,億り人になったらさっさと会社辞めて引退するわと冗談っぽくいっていました.1億の4%で年間400万円の生活水準.駅徒歩30秒・月20万のマンションに住んでるやつの言葉とは思えませんが,まあよしとしましょう.いざとなったら環境を変えればい良いのです.ひろゆきも言ってますが,海外や地方に移住して生活コストを低く抑えれば大丈夫.

 

では,FIREを考えたとき僕があまり現実味を感じることのできない理由は何なんでしょうか.ひとつは25倍で足りる?という疑問です.僕はまともに家計簿も付けておらず年に何度か金融資産の合計額を計算して「うん,ちゃんと増えてるな」と大きく頷く程度です.そんな人間ですが,東京に住んでいてもさすがに年間支出が400万あればやっていけるでしょう.根は貧乏性です.しかし日本人の一生はとにかく長いですから,リスクを考え出すときりがありません.これまでのほほんと生きてきたせいで将来のことなどまともに考えてこなかったのですが,30歳も過ぎたことですしちょっとは自分の人生と向き合うときが来たのかもしれませんね.

 

まずは前提条件です.現在30台前半,働いていて人並みのお給料を頂いており,いくばくかの貯金と各種年金,そしてかれこれ10年程運用している株式なんかが資産でございます.生命保険等は未加入,賃貸暮らしで購入の予定はありません.お金のかかる趣味も今のところありません.ゲイですので結婚の予定はなく,また仮に同性婚のようなかたちになったとしても共働きを強く希望するでしょう.養子をもらいたいという気持ちはないですし,したがって養育費などの支出は想定しませんが,同時に老後の子供からの資金援助もありません.両親ともに健在で一応それなりの貯えもあることは確認済であるものの,介護が必要になった段階で何らかの追加支出が必要になる可能性はあります.それらを負担し合う兄弟はおりまして,一応しっかりと働いております.

 

さて,このようなステータスで1億円が貯まったとして.ライフイベントを契機とする支出変動が少ないゲイライフを送っていけば何となくうまくいきそうにも思えるのですが,しかし.貧乏性かつ心配性の僕はそう簡単には早期リタイアに踏み出すことはしないでしょう.まずは資産運用上のリスク.そもそも年利4%ってエグいんですよ.単年なら可能でしょう.ここ数年のアベノミクスなる日経爆買い政策下であれば,ある程度勝てて当たり前.米国や新興国であれば更に高い利回りが期待できます.それでも.自動取引等により金融市場のボラティリティが一層高まっている今,いつサブプライムのようなイベントが起こってもおかしくないですし,これから40年以上続くと思われる半生において複数回の金融恐慌が発生すると考えるのは自然です.情報収集や分析に膨大なコストを割いているプロでさえインデックスファンドに勝る運用益を達成するのは難しいと言われますが,例えば成長著しいS&P500でさえ,サブプライムを含む20年間でみると税引き後平均利回りは4%を余裕で割り込むのです.

 

ほかにもあります.そもそも資産を適切に運用でき,来る金融恐慌を無事に生き残ったとして.投資に派生する物価や為替についてはどう考えるべきでしょうか.為替を読み違えるだけで特損出す企業があれだけいるわけですから,個人には如何ともしがたいリスクです.円安になればウハウハですが,その逆も当然あります.また,コロナ禍で国内のデフレ傾向が今後しばらく継続するものの,世界的なインフレが加速するなかで長期的にどのように変動するかは不確実性の大きい事象です.

 

加えて想定外の支出が発生するリスク.想定外は想定外なので特定するのは難しいですが,すげーデカい地震が来るとか,津波がヤバいとか,原発が大変とか.もちろん家族が大病を患う可能性もありますし,自分自身が体調を崩すことも考えるべきでしょう.日本には様々なセーフティーネットが存在しますから,そのなかでうまくやりくりできる方策が見つかるかもしれません.しかし,繰り返しますが人生は長い.公的年金がお先真っ暗であるように,社会保障制度が機能不全に陥っているのは誰の目にも明らかです.本当に自分の資産を切り崩さずに乗り越えられるでしょうか?僕は貧乏性で心配性な上に猜疑心の強いゲイなんです.

 

これだけリスクリスク言っておいて,じゃあヤバくなったらもう一度働けばよくない?となるんですが,そこには再就職リスクも横たわっているのです.そりゃまあ医師免許でも持っていれば,日本医師会が医師の人数を増やさない限り安泰でしょうが,弁護士会計士といった国家資格保有者でさえ実務から10年離れた50歳でどこまでやれるのか.僕のような研究者にしたって10年のブランクがあれば知識の更新に膨大な時間を要しますし,研究ツールの習熟も必須です.コミュニティ形成も一からとなれば相当な労力ですね.所謂新卒一括採用の総合職とかになるともはや雇ってくれるだけありがたいよね,というレベルかもしれません.想像してみてください,10年間リタイア生活を続けてきた人が50を過ぎてから求職してきたとして,採用の意思決定します?相当に稀有なスキルでも持っていない限り難しいのではないでしょうか.まあ今なら外食とか介護とか,いつの世の中にも人手不足の業界は存在しますから,そこで頑張るということであれば問題はなし.ただしリタイア直前の給与水準は望むべくもないでしょう.

 

ここまで無意味にFIREをdisり続けたわけですが,それでもセミリタイアなら話は別かもしれない.働き方改革のご時世ですから,給料にあわせて労働時間も減らしてもらいつつ,安定的な収入で資産運用のリスクもヘッジ.完璧じゃん!とも思うんですが,それなら僕は今のままの働き方でいいや.好きな時間に仕事して,アウトプットだけちゃんとしてれば時間的拘束もガバガバだし,別に辛いとか辞めたいとか全然思わない.どっちかっていうと楽しい.まああと10年くらいやったら流石に飽きてくるのかもしれないけど,その時また考えましょうかね.良くも悪くも,多くの人にとって仕事ってのは人生の大きな割合を占めるものなわけですから,それのせいで精神的に満たされない生活を強いられるのってちょっとコスパ悪いですもん.僕は貧乏性で心配性な上に猜疑心の強いゲイなんですけど,その本質は心理的快楽主義者なのです.ヒカキンも言っている通り,好きなことを仕事にしようぜ!の精神です.早期リタイアしたいと思うような仕事を頑張って早期リタイアのための原資を稼ぐって,努力するところ違いません?

 

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毎日投稿時代のHIKAKINの仕事ぶりを見ると,あーはなりたくねーなという気持ちもある

 

んまあ,FIREのようなムーブメントはある種古典的な投資煽りなんでしょうね.退職金をあてにした老後の資産運用しかり,労働世代へのマンション経営しかり.最近は働き手の性質に合わせてよりマイルドな「早期リタイア」というキーワードを掲げてみているというか.投資は絶対重要だし,仮に儲からなかったとしても世の中の仕組みを理解する上でとても実践的な取り組みになり得ると思っています.僕はへなちょこトレーダーなので勝ったり負けたりを繰り返していますが,決算ギャンブルで翌日爆跳ねしたりすると脳内麻薬ドバドバ出ちゃうよねぇ...ってこれは単なる投機なわけですけどね.少なくとも実現可能性の低いスキームに気づける程度の金融リテラシーは持ち合わせていたほうが良さそうな世の中です.そして,金融資産と同じくらいに専門的なスキルってのも自分を自由にするうえでは重要な資産なんだと思います.どっちの資産形成も頑張っていきたいものですね.