巨人の肩に立ちたいゲイ

30代ゲイのブログ。ゲイとしての考えたことをアウトプットしたり整理したりするような場にできればと思っております。やまとなでしこの頃の堤真一が好きです。

ゲイのキャリア形成に関する一考察

ちらほらと問い合わせフォームでコメントを頂いたりします.すべて繰り返し繰り返し読んでおります.今回は大学生の方からの嬉しいメッセージをダシにしてひとつ書いてみたいと思います.こっしーさん,わざわざ感想を寄せて頂きありがとうございます!

 

こっしー

 

大学3年生のゲイです。半年ほど前、9monの使い方について調べていた際にこのブログを見つけたのですが、その他の投稿のテーマも文章も非常に興味深い内容で、その日のうちに食い入るようにそ全ての投稿を読んだことを覚えています。というのも、これまでにショルダーさんのように理論的にゲイとしてのキャリアを歩まれてきたゲイの方を初めて見たため、驚いたのではないかなかと思います。現在就職活動をしており、ショルダーさんの投稿を参考に、ゲイとしてより良い人生を送れるような企業選びを行なっております。ショルダーさんの投稿は、自分のようなゲイとしての将来の方向性が決まっていない若者にも良い影響を与えていると思います。これからの投稿も心待ちにしております!

 

さてさて,就職活動中の3年生ということですが,こんなブログを読むならESのひとつでも書くなりしたほうが生産的かもしれませんね.ただ,せっかく読んでもらえるのならば面接一個分くらいの経験値と示唆を持って帰ってもらえればと思わなくもないです.ショルダーさんのように理論的にゲイとしてのキャリアを歩まれてきたゲイの方を初めて見たとのことですが,今日言いたいのは「みんな結構考えてるくない?」ということ.いやね,お褒めいただくのは大変に光栄ですけどね.

 

「将来のこと」を選択するシチュエーションというのは普通に学生時代を過ごしていても経験することだと思います.大学受験(専門学校)の学校選びや学部選択,その前の文理選択や高校受験などなど.しかし「キャリア」としてより具体的な問題に直面するのはどうしても就職活動に足を踏み入れてからになりがち.そのときに「ゲイとして」という要素をどのレベル感で・どのように意識するかというのは個人差があるのかもしれないですね.

 

よく,ゲイにはロールモデルが少ないという言説を耳にします.ある側面でそれは正しいと思っていて,まだ同性愛者であることを受け入れきれていない10代にとって,成功している,もしくはゲイとしてごく普通に幸せに生活している人物の存在というのは勇気を与えるものでしょう.しかし,キャリアという観点から見ると僕らには無数のロールモデルがいます.生産人口の過半数は男性ですよね?そのうち独身男性だけを取り出したって相当数.ゲイとノンケでキャリア形成のプロセスはそんなに大きくは違わないはずですし,それどころか結婚しない・子供も持たない可能性の高いゲイは,ノンケよりも間違いなく制約条件は少ないわけです.起業や転職における嫁ブロックもありませんし,子供の養育費を考えなくていいってどんだけイージーなんだよっていう.

 

キャリアの在り方は時代やその人の置かれた状況,人生に何を望むかによって当然大きく変わります.工業製品と異なり一点物ですから,出来栄えに絶対的な評価を下すことは難しいですよね.なので僕のキャリアの定性的評価はあくまで僕自身が決めるものであり,僕自身の物語に一貫性があればそれで十分ではないかな,と思っています.就職活動で「自己分析」の重要性が叫ばれたり,入社後も何かと「キャリアの棚卸し」を求められることが多い昨今ですが,僕にしてみれば「普段から自分の人生に興味持ってないでどうするの?」というかんじです.まあこれはちょっと強い主張かもしれないですが.

 

ナイモンの使い方を調べるためにこのすかっすかな内容のブログを訪れるくらいですから,こっしーさんはもしかするとリアルでのゲイの知り合いは多くないのかもしれないな,と想像しました.僕の観測範囲内での話ですけど,人生の分岐点においてゲイならでは?のキャリア選択をしている人は一定以上いる印象です.大学生のこっしーさんに一番ささるのは新卒の企業選びの視点でしょうけれど,具体的にはどんな条件がゲイにとって「良い」企業なのでしょう.東京勤務への強い執着,低レベルなゲイいじりがない職場,ヒゲをはやしてもOK,二丁目やリアルに勤しむ余裕のある労働時間.ちょっと踏み込むとパートナーシップに対する福利厚生,社内にLGBTコミュニティがある,なんてのも入るのかもしれません.

 

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まわりのゲイからもわりとJ&Jは良い評判聞きます

 

しかしゲイという属性特有の事情だけではひっくりかえらない事情もございます.言ってしまえば収入やら会社のブランド力のようなもの.社内にLGBTコミュニティがあるからといって,年収ベースで大きな差のある企業に入社するインセンティブたり得るでしょうか.新卒入社を念頭に置くならば,自分がどの程度の収入を欲していて,どんなレベル感の企業に入りたいのか(入れる可能性があるのか)を明確にし,その上で先に挙げたゲイ的視点にどれだけ重きを置くことができるか,というのは帰するところみな同じなのでは.だって働いたこと無いんだからピーキーな優先順位をつける動機も経験も足りていないと思うのです.

 

とはいえ.仕事選び・会社選びのタイミングはこれで終わりではありませんよね.そうです転職です.業界にもよりますけれど,やはり転職しているゲイは多いです.もちろんキャリア指向のポジティブな転職もありますし,一見するとある種のドロップアウトのように感じられるケースもないことはない.話を聞いていると,30後半~40代まで仕事に邁進してきてそれなりに上手くいったけれど,これから結婚するわけでも子供を育てるわけでもないのに今までと同じ熱量で稼ぎ続けることに疑問を持った,なんて話もよく耳にします.あとは気分転換だとか,新しい業界へのチャレンジとか,いいかんげん東京に拠点を移して中年以降のコミュニティを形成しておきたいとか.世の多くのノンケは家族という守るべきもの(時と場合によっては自分を縛るもの)があるからこそ変化をよしとせず踏みとどまっている人が多いけれど,ゲイにとってその制約はありません.それが良い方向に作用するかどうか,本人の考え方ひとつでしょう.

 

僕も2回転職しましたけど,どちらも日頃の準備とそれなりの運だったかなと思います.新卒の入社式を迎える前には転職サイトに登録していましたし,初回の転職では2社のエージェントを使いわけました.それ以降は直接アプローチしてくれるようなフリーのエージェントと話して情報交換をしたり,場合によっては企業との面談を設定してもらうようにしてますし,スタートアップからアポがあれば基本的に時間をとって話を聞くようにしています.そのほとんどは無駄に終わるというか,直接の転職には繋がりません.事実,初回の転職はほぼほぼコネというかリファラル,その次は直接応募でした.しかし常に自分の市場価値を意識することは重要ですし,日々のモチベーションにつながっていくのは確かです.のほほんとして見える研究者にとってさえそうなのですから,多くのビジネスマンや専門職にとってその重要性は計り知れません.

 

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江副は天才だと思うけど,就活を今の形にしたリクルートは悪

 

まあこんなこと言ってますけど,これもあくまで僕の経験の範囲内でのお話です.こっしーさんの知りたい情報って,実際に色んな人に会って話を聞いてみることではじめて腹落ちするんじゃないかなと.参考にしたい事例も,そうでないものも含めて見聞きするのが一番です.僕はこの件に限らず人としゃべることが好きなのですけど,ある程度気心がしれてきた相手とはよく仕事の話をします.僕が定期的にお会いする方々とはセックスの前後に酒を飲みながら最低でも2時間は喋ります.長いと4~5時間でも余裕でおしゃべりします.自分の知らない業界の話は面白いですし,人生の一歩先を歩いている人(僕の場合は大抵相手の方が年長なので)の考えていることを聞くのは勉強になりますよ.最近だと公正証書作ってペアローン組んで新宿にマンション買った人の話とか.僕は賃貸派なので思想は違いますけどそこそこ勉強になりました.そんな,ある種新婚ホヤホヤみたいな人とセフレやってるってのもどうかと思いますが,お互い話も身体も合うのでね.仕方ないですね.

 

とまあ,とりとめのない自分語りにすり替わってしまったのでここらで話をまとめましょう.「ゲイとしてより良い人生を送れるような企業選び」とのことですが,それはもう普通に自分が納得できる,内定をもらったら心躍るような会社ならどこでもいいとは思います.全ての要素において完璧に自分にハマる選択肢などそうそう出会えるものではないですし,細かな条件に一喜一憂して隣の芝の青さを羨むくらいなら,自分の選択を正当化できるように努力するほうがよっぽど生産的でしょう.働く中で「この条件は譲れないんだな」と実感が湧いたときにはじめて動くことを考えるというのでも良いのではないでしょうか?転職というのは既に十分一般化していますしね.ただ,いざ思い立ったときにどこにも移れない=市場価値がない,となっている状態は避けたいので,そのあたりはしっかりと意識したほうがいいと思います.大手企業では市場価値を相対的に保ちやすいので,その意味では新卒で頑張って就活するというのは戦略として妥当です.もちろん入社してからも組織内に閉じない専門性を身につけることは大事ですが.ちなみに僕の新卒時のしょーもない葛藤はこんなエントリにまとめています.

 

 

shouldersofgiants.hateblo.jp

 

 

業界によっては就職活動も終盤に差し掛かっている頃かと思いますが,ぜひ良い結果に終わることを願っています.頑張って更新するので時々見に来てくださいね!それでは!