続きです.
ひとまず入り口付近で壁と同化することに成功した僕は,落ち着いて周囲を観察...しようとしたのですが,シャワースペースに引き続きハッテン場の洗礼を受けることになりました.そう,ボディタッチなのです.みなさん動かないようでいて,実は常時1割ほどが店内を回遊している様子で,狭い通路をひっきりなしに通行する人たちとその都度インタラクションが発生します.一番多いのはすれちがいざまにチンコに触れてくるムーブ.まあ最小限の手の動きで自然に,しかし確実に意思を伝達できますからね.なんかイメージとしては,ケツとか太ももとか,あとは手の甲とか,そんなところを触ったりするのかなって思っていたんですけど,予想以上のストレートさ.そりゃあここはハッテン場ですから,誰に遠慮するということもないのでしょうけど.
先程目をつけた40代TOOT男性は周囲にいないようで,それなら歩きまわって探しても良かったのですが,このチンコツンツンが面白くてしばらく壁の花を続けてみることにしました.そうすると,どうやらチンコを触ってくるのは結局5人程で,彼らが繰り返しツンツンしにきてくれているだけだということがわかってきました.暗闇のなかほぼ全員がマスクをしているとあっては,パンツなり体つきなりに特徴がないと見分けをつけることが難しく,正確な人数を把握することは叶いません.なんたってここは短髪がコンセプトのお店,全員似たような髪型なのです.とは言え,そのツンツンしてくる中にそれなりに男前そうな,引き締まっていて美味しそうな身体の子がいることにも気がつきました.青っぽいDIESELのボクサー.TOOTさんにアピールするまでは手を出すわけにはいきませんが,僕にとってのNo2認定です.
ひとしきりツンツンを楽しみ自己肯定感をチャージしたところで,いよいよTOOTさん捜索.24会館と違って所詮は1フロアですからすぐに見つかりました.迷路の最奥にある真っ暗な大部屋と思われるスペースのすぐ手前.そこは漆黒の闇に包まれ何も見えなかったものの,漏れ出てくる物音と喘ぎ声から複数人がまぐわっているのは確実であるように思われました.TOOTさんはそれを横目に壁にもたれて腕組みをしています.遅ればせながら鍵の位置を確認すると右腕.
ひとまず彼のすぐ横のポジションにつきます.まったくけしからん身体してるぜ!ただしお店のコンセプト外ということなのか,それほど頻繁にはアピールされていないように見えるのです.一般的な20代ゲイからすると40代は年上すぎなのでしょうか?何れにせよ僕にとってはチャンス.すれ違いざまにチンコを触るような玄人ムーブがどうにもできそうになかったので,遠慮がちに腰のあたりに触れつつ「やりませんか?」と小声で尋ねてみることにしました.ここにきてハッテン経験の浅さが露呈します.彼は少し困ったような,苦笑いのような表情とともに「もう2回やっちゃったんだよね」と耳打ち.残念,果敢にアピールするものの失敗のようです.これは典型的な「お前はタイプじゃねーんだよ」宣告でしょう.だってそんな理由ならなんで店に残って突っ立ってるの?さっさと帰れっての.
ちなみに,こーゆーごくごくスタンダードなやつをお召でした.
とは言え,完全にガン無視されるよりはよっぽどマシってものです.「まじかー,一番にイケたんですけどね」と好意だけ伝えて退散.隣に居座るのはお互いに動きづらいでしょうから,再び迷路の入口付近に戻り仕切り直し.考えたらハッテン場で袖にされるのは初めての経験だな,などと鼻持ちならない感想を抱きつつ背中をポリポリかいていると,今度は水色のブリーフを履いた若者から積極的にアピールを受けました.ウケ,身体つきはよし,目元はわりかし堀の深そうな濃い系,当然ながら短髪.一度声をかけたことで僕の中の緊張がほぐれたのか,「せっかくだしやってみるか」という軽い気持ちで承諾.手を引かれるがまま階段上の個室へ.鍵をかけ,僅かな照明のもとお互いにマスクを外すと,あらびっくり完全なるマレー系のお顔立ちでした.
デカいマスク,暗い店内,身体の触れ合いだけのコミュニケーション,もはや日本人かどうかさえ判別できないのです.マッチョではあったが,ちょっとタイプではない.結局自分は顔専であることを思い知ります.彼は日本語はできない模様でしたので,思っていたのとちょっと違ったことを英語で謝罪しつつ,シンガポールから旅行できていること,海外のゲイ向け情報にBodyBreath!がよく取り上げられていることを教えてもらいました.少し悲しそうな,しかし笑顔で受け答えをする彼を見ながら申し訳ない気分になります.全てはマスク,ひいてはコロナウィルスが悪いのだけれど,責任の一端は僕の目の悪さにもあるのです.お互いにとりあえずチンコを触り合ってハグしてお別れしました.
先程の持ち場に戻ると,今度はガッチリだけどもTOOTさんには身体つきで劣るおじさんが横にやってきました.あまり特徴のない黒のボクサー.大胸筋は発達しているのですが,背筋や三角筋がいまいちです.ベンチプレスばかりやっているのだろうな,などと僅か1年ほどのジム通いの分際で生意気な感想を抱く僕.大きなマスクでやはり顔つきはよくわかりません.コロナ禍とはいえここは地下のハッテン場.性欲と感染症対策の天秤がぶっ壊れているような男しか集まっていないのです.なんでマスクしてるんだっけ.顔見えなかったらハッテンしようにも手が出せないじゃないか!
先程のマレー系の彼のこともあり,ひとりこの世の不条理に憤っていると,おじさんが徐々ににじり寄ってくるのを感じます.そして手の甲をこちらの身体に触れるか触れないか,絶妙なさじ加減で探りを入れてくるムーブ.途端に僕のテンションが高まります.まさにネットで見聞きしてきた伝統的アプローチ.これが体験したくて10年ぶりにハッテン場の門を叩いたまであります.チンコツンツンは野暮.こうなれば勢いです,リスクを負っておじさんについていってみましょう.
承諾の意を示すと,僕の手を引きずんずん進んでいくおじさん.迷路の奥へ進んでいきます.ん?空いてる個室はあるんだけどな.お気に入りの部屋でもあるのでしょうか.壁際の男たちをかき分け更に奥へ.いや,もしかして.嫌な考えが浮かびます.案の定漆黒の大部屋まで連行される僕.幸い?TOOTさんは既にその場を離れているようでしたし,闇の中からプレー最中の音も聞こえてきませんでした.しかし,ここでヤるということは即ち乱入上等バッチコイの意思表明にほかなりません.僕の3P処女は堤真一か伊藤英明に捧げると決めていますので,こんなところで妥協するわけにはいかないのです.
このピンチをどのように切り抜けるべきか,そんなことを考えていると目の端にちらりと見えるDIESELの文字.青いボクサー姿のNo2の彼が歩いてくるのが見えました.僕を引っ張るおじさんの手が離れた瞬間,反射的にその場を離れDIESELくんの肩をつかみます.
「やろうよ」
なんと高飛車な誘い文句でしょうか.既に何度もチンコをツンツンされているからこその,絶対的安全圏からのアプローチ.おじさんに対しての申し訳無さもあり,早くその場を離れたいがための切羽詰まった結果のムーブでもあります.彼は少し驚いたような表情を浮かべながらも「俺でいいんですか?」と.かわいいじゃない,有無を言わせず手を引き近くの個室へ導きます.この一部始終,おじさんは見ていたのでしょうか.見ていたんでしょうね.ごめんなさい.でも大部屋でやるなんて聞いてなかったもの.
たぶんこんなのだった.ちょっとかわいらしいかんじ.
個室のマットに腰を下ろすと,お互いにマスクをはずします.思ったより少し幼い印象ですがなかなかの男前.近くで見る身体も僕よりだいぶ筋量があるようです.「俺のことイケないんだと思ってました」という彼をとりあえず抱き寄せ唇をあわせます.「そんなことないよ,みんなマスクしてるし見分けがつかなくてさ」TOOTさん狙いだったことなどおくびにも出さず答えました.入店してから30分足らず,我ながらだいぶ図太くなったというか,ハッテン場らしい振る舞いが板についてきた模様.鍵の位置を確認すると,僕と同じく足首.
「タチよりなんだけど,ポジションは?」
「ウケよりです」
思った通りです.リバはウケ.彼は下着越しにもわかるくらいに既にガチガチに勃起しており,タチとしては一安心です.やっぱり最初から元気だとこっちも気が楽ですよね.そんなわけで,ようやく10年ぶりのハッテン行為のはじまり.久々の年下相手ですが,おじさん頑張っちゃうぞ!ということで彼を押し倒しDIESELを脱がしにかかりました.
長くなったのでまた明日に続きます.