みなさまAIと聞いてどのような印象をお持ちでしょうか.最近ではAIそれすなわちDeep Learning関連技術という認識が出来上がってしまい,まあ社会的インパクトからそれも致し方ないと思うところではあります.なんたって直近のノーベル物理学賞と化学賞がどちらもDeep Learningでしたからね.最近では大規模言語モデルがすごいことになっています.暴力的なまでの計算リソースを駆使して”人間様の領域”とされてきた知的でクリエイティブな世界,即ちデータ生成をやってしまおうということです.画像と自然言語,それから音声あたりは特に研究が進んでいますので,これからも驚くようなことが短期間で起こるでしょう.
さて,ゲイ界隈に限らずですが,ここ数年世間を騒がせている生成モデルベースのサービスは間違いなくChatGPTでしょう.自撮り写真のジブリ化を目にした人も多いことと思います.無料版でデフォルト設定されている4oが画像生成に対応したことによって爆発的に流行ったわけです.Stable Diffusionなどに代表される画像生成に特化したモデル,俗にいうお絵かきAIは既に存在していたのですけれど,技術的にはそれらとかなり異なったアプローチが採られていて,「とうとうここまで来たか」という感じです.技術的な背景は省略しますが,生成AIは自然言語を入力として,その特徴をよく反映したデータを生成します.ChatGPTにしろStable Diffusionにしろ,プロンプトと呼ばれる説明文から画像を出力するわけです.

さて,ひととおり既存の写真の変換を試した見た後で,みなさんであればどんな画像を生成しようとするでしょうか.美しい風景写真?かわいい子犬のイラスト?んなわけないでしょう.どう考えたって好みの男のあられもない姿,もしくは男たちのムフフな営みの様子を生成しようと試みるに決まっているわけです.しかしその願いは叶いません.商用レベルのサービスは兎用曲折あってポルノ,暴力,薬物といったNSFW(Not Safe For Work)なコンテンツが学習対象となるデータセット自体から排除されていたり,出力時の検閲で弾かれるようになっているのです.「マッチョなイケオジ同士が激しくセックスしてるところ!」とリクエストしたとて,「ポリシーに違反している可能性があります」などとそっけなく返されるだけ.どうにか回避を試みたとしても,2人組の男性が向かい合っているレベルの画像が関の山でしょう.
そもそもChatGPTってなかなかエロ小説書いてくれないし,不謹慎な質問をしてもはぐらかされてばかりだし,やっぱ生成AIなんてろくなもんじゃねーなとお考えかもしれませんが,その判断は拙速です.学習対象から排除されているなら,追加学習させてしまえばいいのです.ChatGPTを開発しているOpneAIは,その名に似合わずモデルの中身が非公開でダメなのですが,画像生成の雄であるStable Diffusionなら可能です.様々な方法がありますが,例えば大量のポルノ動画が世間には出回っていますよね.そのうち自分のお気に入りの作品をいくつか選びスクリーンショットを大量に取得,各画像に対して自動でラベルを付与します.それらを追加データセットとしてまとめて,既存の巨大な生成モデルに追加学習させるわけです.これによってAIはエロ(それも男同士)という新たな地平に到達し,水を得た魚のようにエロ画像をばんばん生成してくれます.めでたしめでたし.この方法の弱点ですが,python及び機械学習関連ライブラリ使用のための基礎的なプログラミングスキルが必要なのと,AWSとかのGPUに数万円ほど課金した上で,2週間程度の計算時間を要するというところですかね.
やっぱ生成AIろくなもんじゃねーなとお考えでしょうか.その判断はまたしても拙速です.先達にはそのような追加学習モデルを無償で公開し,誰にでも平等のエロを提供してくれる有能エロ技術者が存在します.CivitaiやHugging Faceなどのリポジトリに公開された学習済みモデルたちは日に日に充実してきており,お好みのものをダウンロードしてちょちょっと読み込めばはいおしまい.しばしの間マシンが悲鳴を上げる様子に耳を傾けていると,画面には途方もなくエッチな(しかしなぜか既視感のある)画像が生成されているというわけです.良い時代になったものです.
この生成AIの沼なところは,なんでも生成できてしまう点にあります.もう少しチンコが大きければいいのに!下着はケツワレ一択だろ!やっぱ脇毛はフェチにささりますなぁ!など,いろいろな希望が叶ってしまうのです.叶ってしまうからこそ,我々は自身の際限のない性欲に駆り立てられて無限に画像の修正を依頼することになります.人間のイラストレーターさんなら音を上げるか追加料金を請求してくるところですが,生成AIは多少の電気代で文句も言わずに画像を納品してくれるのです.AIは本質的に確率的な振る舞いをしますので,毎回異なる画像生成します.ガチャを引くという点においても悪魔的で,「次こそはもっと激シコな画像が出てくるかもしれない...!」そう思うと"Generate"のボタンをクリックする手を止めることは出来ません.最早敵は電気代などではなく僕自身の生活時間なのです.
ここでひとつ,自分にとって最もシコい画像を想像してみてください.そして,それについてプロンプトを記述してみてください.潜在的な性癖を言語によって表現しようとするのは案外難しいのではないでしょうか.誰も見ていないとは言え,場合によっては自身の恥ずかしい妄想を自らの手によって記述するという苦行も相まって,なかなか手が進まないかもしれません.しかし,AIはプロンプトを入力すれば数秒後には画像を生成してくれますし,それが少しでも股間を熱くさせてくれるのであれば,次第にあなたの羞恥心は麻痺し,無心にエロい英単語をタイプするだけの装置に成り下がるのです.
A stoutly built PE teacher in his mid-40s, wearing Speedos, lies on his back with his legs spread open and stares into the camera.
いかがでしょう.これが僕の基本構文のひとつでして,ここにsweatyだとかhairyだとか,競パンの色は黒だとか,ときには体育教師じゃなくて消防士にしてみようとか,そんなふうにして味付けを変えてみることもするのです.これは完全に内省的かつクリエイティブな作業でして,MBTI性格診断のようなものよりよっぽど自己理解に役立つに違いありません.ナイモンのプロフィールにINFPなどと書いておくくらいなら,Stable Diffusionのプロンプトで性癖を表明しておくほうがお互いにとって有意義ではないでしょうか?

この作業を通して実感するのは,たとえ自分がよく知っていることであっても,自分が思っていたほどにはそれを整理できていないということです.性癖に限らず,抽象的な概念やアイディアを言葉におこす際にはそれなりの労力を要し,最初のワーディングは大抵間違っていて,何度も推敲していく必要があります.同時に,アイデアは不正確なだけでなく不完全でもあって,最終的に形になったアイディアの大半は,試行錯誤の最中に思いついたものなわけです.これは僕がブログを書く理由でもあります.最近はYoutubeやポッドキャストなどのメディアを楽しむことも多いですけれど,僕が未だに文章という形で表現を続けているのはまさにこの点にあります.
ヴィトケンシュタインは言語の写像理論において,神や道徳などの抽象的対象については論理的に語り得ないと主張しました.人は言葉によって思考するものの,どれだけ語っても現実というのは語り尽くすにはあまりに情報量が多く,言語と世界の写像関係を記述しきることができると考えるのは人間の驕りであると断じたのです.然るに,自らの性癖に真っ向から向き合いAIに対して丁寧に言葉を紡いでいくという営み,これは神について議論しようというにも等しい,極めて野心的な試みと言えましょう.ではどうすべきか.どうすれば性癖という抽象概念から激シコな画像を上手に具現化できるというのでしょうか.
実のところ,生成AIの入力は早晩自然言語による単純なプロンプトから脳波などのより高次元な情報にとってかわられるかもしれません.これが意味するのは「人間の言語能力がAIにとって最大のボトルネックかも」という恐ろしいけれど真実味のある予想です.最早生成AIは画像や映像という手段で言語の限界を迂回しようとする技術とみなすこともできます.この技術により,人々は自分自身の欲望や価値観を,言語による厳密な定義を介さず直接的に具現化することが可能になるのです.僕にとっての激シコな画像とは,僕がそう言語化したものより,僕の脳波が激しく脈動し,僕のチンコがビンビンに勃起したものに決まっているわけですから.
来年には動画だって手軽に生成できるようになっているでしょう.個人が好みに合わせてカスタマイズしたエロコンテンツがAIで生成できるようになるのですから,SNSで脱ぎ散らかしているインフルエンサーは大きく数を減らすでしょう.せっせとfansにアップロードした動画だってAIの餌となります.常々主張していますが,今後インフルエンサーとして生計を立てていきたいのなら,なるべく早く,公式に,金玉のほくろからアナルのしわまで高精細に記録した3Dデータセットを公開すべきなのです.ニューラルネットワークの重みの中に自分の生きた証を刻み込むのです.AIが好んで出力する人気者になれば,リアルでの人気も保証されることでしょう.インフルエンサーのコラボレーション(と言う名のセックス)はマンネリ化から自由になれません.生身の人間の性技にはおのずと限界があるのですから,それさえ視聴者に投げてしまえばいいのです.生成AI的な文脈における”キャラ”に転生できるのであれば,膨大なパラメータ空間のなかで変幻自在のセックスを具現化する神にさえなれるでしょう.
...とまぁ壮大な未来像を語ってきましたけれど,ここまで読んでいただいた我慢強い皆様には特別に,僕目線での直近のベストプラクティスをシェアしておきます.Stable diffusionでモデル組み合わせまくってcomfyUIで無限に画像を吐き出せるのと,Grokにクッソエロいシチュエーションの恋愛シミュレーションゲームのゲームマスターやらせてテキストセックスする,の2つです.手間はかかりますけれど,全く新しい性的体験をお約束しますので是非ともお試しを!AIが駆動するエロ,これからも目が離せませんな!!