友人の長男がこのたび中学生になりました.友人夫婦とは長い付き合いでして,同棲のための引っ越しを手伝い,結婚式の幹事を引き受け,命名辞典を手に長男の名前を一緒に考えたほどです.そんな息子氏が13歳とは大変に感慨深いわけですが,一方でこうも思うのです.「僕はいつまでも親の気持ちなどわからないままなのだな」と.そんな折,とても嬉しいコメントを頂きました.一応公開の許可もいただいていますので,ブログにて返答してみたいと思います.
みかん
40代主婦で中1の息子がおります。
親馬鹿ではありますが、息子は外見が良く勉強もできて優しい性格です。パーフェクトな息子ですが(が、と言うのは失礼ですけれども)最近、この子はゲイなんだろうなと思う行動が増えてきたため気になっておりました。
いろいろあって辿り着いたショルダーズさんのブログを通し、ショルダーズさんのようなインテリなゲイの方の存在や生態を知れたことで、親としては大変安心し、将来予測される息子からのカミングアウトにも冷静な気持ちで臨めそうだと感じています。ありがとうございます。
そして、息子にも将来、ショルダーズさんのような素敵な方がパートナーになってくれるといいなぁなんて、勝手に思ったりもしています。 上記に失礼な表現が無いことを願いますが、もしありましたら私の配慮不足によるもので申し訳ありません。全く悪意はありません。
これからも応援しています!
まずはコメントありがとうございます.そして,キラーコンテンツが発展場探訪と出会い系アプリである自分のブログを見返し,もっとやりようがあったのではないかと後悔すること頻りです.ゲイのご子息をお持ちの親御様を想定読者としておらず,なんとあけすけな表現を続けてきたことか!どこに「親としては大変安心」できる要素があったのかピンと来ていませんけれど,まあご本人がそうおっしゃるのならよしとしましょうか.

さて,このコメントを読んで思ったことがいくつかあり,思いつく順に書いていきたいと思います.同年代のみかんさんを想定して,それから中学生だった頃の自分を思い出して.
1.息子がゲイかどうかってやっぱわかるもんなのかな
当事者でさえ相手がゲイかどうか見分けがつかないことも多いのに,果たして本当にわかるのだろうか,って思いました.しっかり書いたことがないので今度まとめてみようと思うんですけど,僕のカミングアウトは両親にとって青天の霹靂でして.強く「隠さねば」という意識があったわけではないけれど,別にばれるような状況でもなかったし,実際にばれていなかったわけです.19歳でカミングアウトしましたけれど,その際にはたいそう驚かれました.
したがって,現時点で何故「この子はゲイなんだろうな」とお感じになったのかには若干興味をそそられます.もちろん,家族にしか見えないことってあるでしょうから,本当にゲイである可能性はありますし,その時は本人が打ち明ける決心をするまで優しく見守ってあげてください.やっぱり母親が受け入れてくれたという"事実"であったり,カミングアウトをしたならばきっと受け入れてくれるだろうという"信頼"は,子供にとって非常に心強いものだと思うのです.
2.ゲイのロールモデル問題
「インテリなゲイの方の存在や生態」というところが面白いなと思っていて,僕の目線からすると,所謂知的階層に属するゲイってごく普通にいるんですよ.アプリで会って,会話が弾んで,仕事とか聞くと結構いいところに勤めていたりとか,似たような大学を出ていたりとか.ゲイという属性をフックにメディア出演する人は,依然として芸能・美容関係であることが多いですけれど,可視化されていないだけで社会におけるゲイの分布ってストレートのそれとほぼ変わらないのではないかと思ったりするわけです.
特定の業界以外の人がカミングアウトしていないというのは,それはそれで闇が深いという解釈もあり,実際その通りだと思うのですが,「ゲイが幸せに生きる方法論の乏しさ」に直接つながるわけではないことに注意したいです.陳腐な表現ですが,みんなそれなりに楽しく生きてるんじゃないですかね.世間から見ると「結婚していない少し小太りな独身者」が実は「パートナーと同居しているインスタで人気者のガチムチゲイ」かもしれないわけです.
3.とてもバランス感覚がある
立派に子育てをされている方に対しやや不遜な物言いかもしれませんが,とても許容度の高い人なのだなと感じました.息子さんがゲイである可能性を感じ,それをきっかけにネットを通じて様々な情報を収集する,その行動自体に感銘を受けます.情報が氾濫している現代において,「発展場 24会館」とか「ナイモン レベル」で検索しない限りヒットしないこの辺境のブログにたどり着くというのは並外れた努力の結果ですよ!そして何より,自分の知らないコミュニティに対する配慮を忘れない点が素晴らしいと思うのです.
一方で,そのような懐の深い方に「失礼がなかったかどうか」を過度に気遣わせてしまう,現在のポリティカルコレクトネス過剰な風潮も少し息苦しいなと.文脈を正しく共有することができるならば,悪意のなさを殊更に強調する必要なんてないはずなわけで.既にコミュニケーションを取るつもりがないように見える,異なる意見を持つ集団(例えば,同性婚推進派と反対派)が,それぞれの主張を尖鋭化させ,SNS上で軋轢を生んでいる現状は確かにあります.しかし,相手をリスペクトする個人間の対話において,実際に不快さを感じる状況はほとんどありません.今回いただいたコメントもまさにそうした例だと思うわけです.
4.息子のパートナーというパンチライン
それにしたってですよ.僕が一人で衝撃を受けていたのは「息子にも将来、ショルダーズさんのような素敵な方がパートナーになってくれるといいなぁ」という一文です.いやね,確かに僕はなかなかに見どころのある男ですよ.僕と同じくらいに素敵な男が相手であれば当然,安心して息子さんとのパートナーシップを応援できることでしょう.イケメンってわけでもないし,身長も低いし,何よりすごく性格が悪いですけれど,心身ともに健康だし,人並みに仕事をしているし,掃除洗濯に自炊だってちゃんとできる37歳男性なのですよ,僕は.
しかしです.この37歳は自分の彼氏探しに汲々とするばかりで「自分の子供のパートナー」などという視点が端から存在しません.これまで,キャリアだとか学歴だとかについて得意げに語り,知ったような顔をして世の中について様々な意見を述べて参りました.結婚はしていないけれど,子供もいないけれど,一人前の男として恥ずかしくないだけの知性と精神性を有していると自負して参りました.ところが,「子供のパートナー」についてごく自然に触れているみかんさんのコメントを読み,愕然としました.これってまさに「子供の幸せを願う親」の姿なわけです.他者を感情の発露の起点とするとでも言いましょうか.とにかく両親や兄弟,もちろん彼氏に対するそれとも違う気がするのです.おそらく僕のブログには一生出現しないはずだった語彙.それは慈愛.慈しみの心.これまで一度だって抱いたことがあったでしょうか.なんという絶望的なまでの差.
ゲイはいつまでも子供っぽいなんて言われます.「んなことあるか!」と強がることもできますが,確かにね,そうかもね.冒頭の友人の息子,それから最近生まれた甥っ子.同年代が親になっていく姿はいくつも目にしてきましたけど,彼らもこの慈愛の心を持っているはずなのです.頭で分かっていても,こう,改めて冷静に気づかされるような気持ち.少なくとも今の僕には足りないものなんでしょうね.まあ子供いないんだからしょうがないし,別のところで十分に社会に貢献しているつもりではあるけれど.
そんなわけで,僕はこれからも引き続き世の息子たちの理想のパートナー像であり続けられるよう努力していく所存です.手始めにブログをもっと活発に更新していきますので,何か質問やコメントなどありましたらお問い合わせフォームまでお気軽にお寄せくださいな.それでは!