巨人の肩に立ちたいゲイ

30代ゲイのブログ。ゲイとしての考えたことをアウトプットしたり整理したりするような場にできればと思っております。

ゲイに愛された女

先日コロナ禍でアルコール提供のない結婚式にお呼ばれしてきたのですが,マスク着用の結婚式というのも最早なんの違和感もなく受け入れられるあたり,僕らの意識もこの1年半で大きく変わったのだなと実感しました.食事と写真撮影のときだけマスクを外してというのも,面倒ではあるけれど当たり前のように受け入れていて,人というのは必要に迫られれば案外柔軟に対応できるものですね.新郎新婦の2人はとても幸せそうで,お見合いアプリで婚活していたことも割りかし堂々と説明していました.今の時代,出会いのあり方は多様でいいはずですが,一般的にはまだまだ自然発生的(であると錯覚しがち)な出会いが至上とされるような向きもありますし,彼らのような成功事例が世の中に増えて社会の窮屈さを解消してくれるといいなと思います.

 

さて,僕はこれまで数多くの結婚式に参加して参りましたが,やはり記憶に残るものとそうでないものが存在します.今回お話するのはとりわけ思い出深い,僕の学生時代の同期と,彼のインターン先で働いていた女性社員のカップルのことです.友人は大学3年の頃にインターンをしていて,仕事上関わる機会の多かった女性社員と仲良くなりました.年の差は10歳,相手は既に30を越えており,おまけに友人は童貞だったのですが,なんやかんや互いの人間性がよくあったということなのでしょうか,しばらくしてから付き合い始めることになりました.当時友人とは定期的に飲んでおり,ときには彼女も含めて3人で食事をすることもありました.彼女は休日は基本的に家で過ごしてきたインドアタイプでしたが,友人は本格的な登山も嗜む完全なアウトドア派.どのように2人での時間を過ごしているのか聞いてみると,彼女のほうが徐々に外に出るようになったようで,本人も「まさか自分が30にもなってから登山やスノーボード始めるとは思わなかった」と言っていました.でもその変化を楽しんでいるようで,微笑ましくもありました.

 

そんな2人が晴れて結婚する運びとなり,僕は唯一の共通の友人ということで二次会の司会を任されることになりました.当時僕はまだ修士課程の学生で,結婚式の参列経験にも乏しく,果たしてうまく責任を果たすことができるのか心配ではありましたが,ご指名とあれば引き受けないわけにはいきません.さっそく幹事団を結成し打ち合わせに取り掛かることにしました.初回は新婚夫婦の部屋で夕食をご馳走になりながらということになり,新郎側からは中高の同期である僕ともうひとり,新婦側からは大学時代のゼミの同期で男女1人ずつか参加予定とのこと.

 

当日,引っ越し作業も手伝った僕にとっては勝手知ったる新居にお邪魔すると,既に幹事のメンバーが揃っていました.早速食事ということで,奥さんの料理を食べながら自己紹介をすることに.相手方の幹事は某財閥系総合商社のやり手なかんじの女性,某大手出版社で編集者をしている飄々としたかんじの男性,更にその友人でDJをやっているという方も参加していて,彼は自前の機材を持ち込んでPAを担当してくださるそうです.なんかすげーな.こちらと言えば20そこそこの学生2人組で,まともに結婚式に出たこともないわけですが,この人達がいればきっとどうにかなるでしょう.新婦主導で結婚式までのタスクリストとスケジュールがテキパキと説明されていき,それぞれが自分の担当分についてすり合わせを行いました.

 

ひととおり打ち合わせが済むと,そこからは主役2人の馴れ初めや互いの学生時代の思い出話,そして近況報告に花が咲きます.こんな席ですから自然と話題は結婚についてフォーカスするわけですが,僕が「そう言えば結婚っていつ頃から意識しはじめるもんなんですかね?」と誰ともなく尋ねてみたところ,その場にいた男性陣は新郎を除いて全員未婚という.まあ30そこそこの男性が結婚していなかったからって別におかしなことは無いのですが,編集者の男性も友人のDJもうっすら笑いながら「まあ結婚はないかな~」という返答.奥さんも「まあそうだよねー」とこれまた微妙に半笑いで受け答えしており,なんとなく違和感がありました.しかし,編集者が続けてこう口にしたのを僕は聞き逃しませんでした.

 

「でも,最近はJack'dとかもあるしね」

 

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Jack'd使わなくなったなー

 

いまジャックドって言った!?言ったよね??動揺する僕.それを聞いたDJはゲラゲラ笑いながら「このあいだ近くにいるの見たよ笑」なんて言っています.これは間違いない.この2人ゲイです.(当時,まだナイモンは登場したてでJack'dがメジャーでした.)考えたら奥さん,大学時代はフェミニズムやらジェンダー論で超絶有名な赤髪社会学者のゼミ出身です.編集者氏はゼミの同期ですから,それなりに競争率が高かったであろうそのゼミにわざわざ所属しようと考える男子学生がゲイであったとして,何も不思議ではありません.彼自身,ショートヘアーで顔の系統的にはあまり似合わないラウンド髭を蓄えており,状況証拠も十分です.ちなみに彼の連れてきたDJはガチムチヒゲ坊主で,でもどこか口調は穏やか.何故今まで気づかなかったのかと思うほど十分なゲイ要素.

 

 

動揺しつつも,少なくともここは黙ってスルーしておくのが正解.食事とお酒と会話を楽しみつつ,しかしついつい向かい側の2人の様子を伺ってしまいます.その当時,そこまで活発にゲイとして活動していたわけでもなかったため,いろいろな意味で興味津々.失礼とは思いながらも,どっちもウケっぽいなとか,よく見ると仕草がちょっとフェミニンだなとか,髭を生やさなきゃいけないルールでもあるのかなとか,やっぱりゲイはメディアとか音楽とかそーゆークリエイティブな職を選びやすいのかなとか,そもそもDJって言うけど二丁目のクラブとかで活動してるって意味なのかなとか,ってかこの2人付き合ってたりすんのかなとかとか.

 

悶々としているうちに顔合わせはお開きとなり,後は本番までメールベースで進捗状況を共有することに.僕と同期は追加で詰める内容があったためもう少し部屋にお邪魔していたのですが,食事の片付けを終えた奥さんが戻ってくると僕らに「年も離れてるけど,私の友達とは上手くやれそう?」と尋ねてきました.実際良い人たちのようではありましたし,特に心配もしていなかったので「皆さん仕事も早そうだし人当たりも良かったので安心してます!PAも身内で用意するなんてなんだか本格的ですね笑」と答えました.すると奥さんは「男2人は新宿二丁目でイベントやっててセミプロみたいなもんだから,基本的に任せちゃっていいと思うよ」と.続けて,

 

「私,仲のいい男友達って全員ゲイなんだよね.shoulders君以外.」

 

どうやらあの2人がゲイなのは周知の事実のようです.聞いてみると2人は学生時代に付き合っていて,その時に紹介されてからの仲なんだとか.別れた今も一緒にイベントオーガナイザーみたいなことをやったりしているそうで,だからこそ何となく親密な空気が流れていたんですね.ってかその前に,唯一の例外と思われている僕も結局ゲイなんですけれど笑

 

てなわけで,衝撃の食事会から3ヶ月後,幹事5人中3人がゲイという偏ったメンバーで仕切った二次会が執り行われました.DJ氏の趣味全開な選曲は新郎側の参加者(新社会人)にはさっぱりのようでしたが,新婦側(主に30代前半超高学歴文系女性)にはだいぶ響いていたので良しとしましょう.まあね,ピチカート・ファイブで踊れって言われても,デビュー時点で僕らまだ生まれてないですからね.女性陣はわりと騒ぎながらtwiggy twiggy踊ってましたが.また,しっかり準備して挑んだ司会業は無事に役割を終え一安心.酔っ払った新婦側の参列者のお姉様方から「君の司会はなかなか見どころがある」とお褒めの言葉を頂いた後,「この様子だと,今後めちゃくちゃ結婚式に呼ばれることになるよ」という謎のお告げを受けたのが印象的でした.以降,飽きるほど結婚式の二次会で幹事を引き受けたことを考えると,彼女は見事な慧眼の持ち主であったと言えましょう.

 

 

あれから10年,実は先日旦那の方に呼び出されて珍しくサシで飲んできました.普段は仲間内で集まるし,ちょっといつもと雰囲気が違うので「もしや離婚の報告では?」などとドキドキ.2人の共通の友人って僕くらいですからね,10年あれば人間の気持ちが変わってしまうのにも十分な時間です.あり得ない話でもないように思えました.彼の職場近くの居酒屋で乾杯しつつ用件を聞いてみると

 

「俺,パパ活やっちゃったよ.ハマりそうで怖い...」

 

はいはい.期待して損しました.確かに彼は奥さんと付き合うまで童貞でしたからね.そりゃあある程度の金を手にするようになったらこーゆーのにはまってもおかしくないとは思いますけど.それにしたって,女性と接点を持つ方法にもいろいろあるなかで,敢えてパパ活に行きますかと.どうやら奥手なやつは一人で風俗やらキャバクラやらに行くのは躊躇われるようで,アプリでちょちょいとアポの取れるパパ活というのが気負わなくて良いようなのです.女の子も見かけ上は素人ですから,プロっぽい人を相手にするよりリラックスできるんでしょう.

 

事情聴取してみたところ,これまで女子大生2人と延べ6回程会ったものの肉体関係は無し.相手の素性も割としっかりしているので安心とのこと.どのへんが安心なんでしょうね.ただ,以下のような興味深い供述をしており,ちょっと友人として注意してやる必要ありと思われました.

  • パパ活業界では,30代前半フツメンというだけで競争力が有り,レベル高めの女の子とマッチする
  • 自分の学生時代には相手にされなかったようなキラキラした女子大生がふつうに会話してくれる
  • 妻以外に女性を知らなくていいのか?という謎の焦燥感がある

なんというか,世の中でパパ活が流行るのも納得といったところです.本当にしょうもない.僕のアドバイスとしては「疑似恋愛や性行為がしたいならプロの店にいけ.ちゃんと金を出す限り素人より本気度が高いし技術もある」「既婚者でパパ活はリスクが大きすぎてコスパが悪い」といったものでした.まあ,彼の場合は節度もあるし,どハマリするところまでは行かないだろうと予想していましたが,やはり奥さんのことを考えると釘を刺さないわけにもいきません.

 

ゲイである僕が繰り出すノンケ風俗に関するレクチャーを黙って聞く彼は,あの瞬間日本で最も的はずれな相手に相談をしていた人間だったことでしょう.帰りしな,どうして僕を誘ったのか聞いてみると,「まわりで一番,風俗とかパパ活に造詣が深そうだったから」という回答.夫婦揃って僕をノンケだと信じているようで,僕の20年来のノンケ擬態もまだまだ大丈夫そうです.面白そうだし,そのうち1回くらい女子大生相手にパパ活でもやってみようかなと思ったりするのでした.